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松村 助教、山本 教授らの研究グループが、重力の実在性の破れを検証する方法を提案しました。

  • 2022年7月22日(金)

ポイント

  • 物理学最大の未解決問題「量子重力」の実験的検証を目指す理論を構築
  • 重力の実在性の破れを検証する方法を世界で初めて提案
  • 量子技術を用いた量子重力の新しい研究分野の創出に期待

概要

 従来、重力と量子力学を統一する量子重力の研究は、超弦理論を中心とする理論研究により進められてきました。未完であるこのアプローチの難しさは、理論と実験が結びつきにくい点にあります。重力と量子力学の融合に関して、重力が量子力学に従うかどうかさえわかっていません。2020 年にノーベル物理学賞を受賞したペンローズは、重力が量子力学に従わない可能性を指摘しています。重力が量子力学の枠組みに従うかどうかという「重力の量子性」は、量子重力の出発点となる問いですが、全く確かめられておらず、検証が必要です。

 今回の研究は、量子力学の性質として知られる「実在性の破れ」を重力が示すかどうか確かめる方法を初めて提案し、また、実験による実証の可能性も示しました。そのような検証実験は、量子技術の発展により将来実現される可能性があります。今回の研究成果は、量子技術を用いた新しい量子重力研究の創出を期待させるものです。

 松村 央 博士 (九州大学 助教)、南部 保貞 博士 (名古屋大学 准教授)、山本 一博 博士 (九州大学 教授) の研究グループは、先行研究において重力の量子力学的非局所性を検証するために用いられた理論模型に対して、今回は、「実在性の破れ」に着目した理論解析を行いました。プレスリリースの図1は、理論解析で用いた振動子と左右に空間的に波束が局在化した重ね合わせ状態の粒子の模型 (ハイブリッド模型) です。レゲット・ガーグ不等式は、巨視的な量子系の実在性の破れを検証するために考案されました。今回の研究では、この模型を用いて重力相互作用が量子力学の枠組みに従う場合にレゲット・ガーグ不等式が破れることを発見しました。これによって、重力の実在性の破れという量子力学的性質が確かめられる可能性を明らかにしました。

 今後は、実験によりどのように巨視的な量子系を実現し重力の実在性の破れをテストするか、さらに具体的な検討が必要です。この成果は、量子情報科学技術を基盤とし、実験と結びつく量子重力への新しいアプローチとして価値があります。

 本研究成果は、米国のトップジャーナル「Physical Review A」に 2022 年 7 月 20 日(水)に掲載されました。(https://doi.org/10.1103/PhysRevA.106.012214)

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