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奈良岡 教授らの研究グループが、炭素質隕石から遺伝子の主要核酸塩基の 5 種すべてを検出しました。

  • 2022年4月27日(水)

ポイント

  • 最古の太陽系物質である炭素質隕石から、遺伝子の主要核酸塩基 5 種すべての検出に初めて成功。
  • 生命誕生前の物質進化の過程のうち、初生的な遺伝機能の発現候補となる分子進化を解く鍵になる。
  • 炭素質小惑星探査「はやぶさ 2」「OSIRIS-REx」による地球帰還サンプルからも検出が期待。

概要

 北海道大学 低温科学研究所の大場 康弘 准教授、海洋研究開発機構の高野 淑識 上席研究員、九州大学 大学院理学研究院の奈良岡 浩 教授、東北大学 大学院理学研究科の古川 善博 准教授らの研究グループは、最古の太陽系物質である炭素質隕石から、全ての生物の DNA・RNA に含まれる核酸塩基 5 種(ウラシル、シトシン、チミン、アデニン、グアニン)すべての同時検出に世界で初めて成功しました。

 生命誕生前の原始地球上でどのように最初の生命が誕生したのか、という科学における究極の謎について、炭素質隕石や彗星など地球外物質によって供給された有機化合物がその材料となったという説が提唱されています。しかし、生命の遺伝機能を担う DNA や RNA の構成成分、核酸塩基については地球外物質からの検出例が少なく、地球上での初生的な遺伝物質の分子情報や生成機構を含め複素環分子の多様性に関する基礎情報は、断片的な記載にとどまっていました。

 本研究では、独自に開発した高精度な核酸塩基分析手法を駆使して、マーチソン隕石やタギッシュレイク隕石など 3 種の炭素質隕石から前生物的な遺伝子の候補となる核酸塩基 5 種すべてを含む 18 種類の核酸塩基類を網羅的に検出することに世界で初めて成功しました。それら核酸塩基の種類や存在量の分析により、少なくともその一部は太陽系形成前の星間分子雲という環境で生成した可能性が示されました。本成果によって、生命誕生前にも多様な核酸塩基類が地球上に供給されていたことが強く示唆され、始原的な分子進化における最初の遺伝機能発現の過程を読み解く鍵になると期待されています。

 なお、本研究成果は、日本時間 2022 年 4 月 27 日(水)午前 0 時公開の Nature Communications 誌に highlighting paper としてオンライン公開される予定です。

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