日本海沿岸地域の大雪の発生要因として、日本海寒帯気団収束帯 (JPCZ) が最近注目されていますが、北陸地方に局地的豪雪をもたらす「北陸不連続線」の存在が古くから知られているにもかかわらず、両者の関係が非常に曖昧でした。本研究で、九州大学大学院理学研究院の川村 隆一 教授、理学府修士課程 2 年の鈴木 雄斗 大学院生 (研究当時) らの研究グループは、気象モデルの高解像度数値シミュレーションによって 2021 年 1 月上旬の北陸地方を中心に甚大な被害をもたらした豪雪事例を再現し、JPCZ と北陸不連続線によって沿岸部の極端な降雪地域が二極化すること、北陸不連続線は JPCZ と区別される、沿岸前線であることを初めて明らかにしました。
JPCZ 発生の主要因の一つである朝鮮半島北の長白山系の障壁効果については従来から指摘されてきましたが、沿岸前線 (北陸不連続線) の形成にも同山系を迂回する気流が一旦本州に上陸して内陸側から前線に収束するプロセスが必須であることが長白山の標高改変実験から見出されました。これらの知見はライフライン・交通障害を含む豪雪被害を軽減するための降雪予測の精度向上に資することが期待されます。また日本海沿岸地域における大雪発生頻度の将来予測の信頼性を高めるためには、JPCZ や沿岸前線を十分に解像してその動態を調べていく必要があります。
本研究成果は、2022 年 4 月 8 日に国際学術誌「Weather and Climate Extremes」にオンライン掲載されました。また本研究は JSPS 科研費補助金 (JP19H05696, JP20H00289) の助成を受けました。