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恩田 教授、宮田 助教、西郷 将生さんらの研究グループが、重金属を用いずに可視光を紫外光へと高効率変換する分子性材料を発見しました。

  • 2022年1月13日(木)

ポイント

  • 光触媒による燃料製造・環境浄化システムの高効率化に向けて、重金属を用いずに効率よく可視光を紫外光へとアップコンバージョンする技術の開発が重要
  • 今回の発見により、重金属フリーな可視光→紫外光へのアップコンバージョンの効率が、従来記録の 8.2% から 20.3% へと大幅に更新された
  • 低コストかつ持続可能な燃料製造・環境浄化システムへの応用が期待

概要

 波長 400 nm 以下の紫外光は、光触媒と組み合わせることで燃料製造や屋内での消臭・抗菌および環境浄化といった幅広い応用が可能であり、非常に重要です。一方で、地表に届く太陽光に含まれる紫外光の割合は非常に低いため、人工的に発生させる必要があります。

 本研究で、九州大学 大学院工学研究院の楊井 伸浩 准教授、君塚 信夫 教授、同大学 大学院工学府の宇治 雅記 大学院生、原田 直幸 大学院生、同大学 大学院理学研究院の恩田 健 教授、宮田 潔志 助教、同大学 大学院理学府の西郷 将生 大学院生らは、重金属フリーでありながら可視光を紫外光へと高効率にアップコンバージョンする分子性材料を発見しました。三重項-三重項消滅 (TTA) を用いたフォトン・アップコンバージョン (UC) により、太陽光に多く含まれる波長 400 nm 以上の可視光を高効率で紫外光へと変換することができれば、光触媒の大規模な利用が可能となり、クリーンな燃料製造や環境浄化システムが実現できることが期待されます。

 本研究では、重金属フリーな可視光から紫外光へのアップコンバージョン効率の従来記録である 8.2% を大幅に更新した 20.3% という高い効率を達成しました。また、従来系では太陽光よりも 1000 倍ほど強い可視光を必要としていましたが、本系では太陽光と同等の弱い強度でも可視光から紫外光へと変換することが可能です。加えて本系では、従来系の多くで用いられてきたイリジウムやカドミウムといった重金属が含まれていないことから、低コストかつ高い持続可能性が期待されます。今後は光触媒と複合化することで、燃料製造・環境浄化システムへの応用が期待されます。

 本研究成果は、2022 年 1 月 10 日(月)にイギリスの国際学術誌「Journal of Materials Chemistry C」にオンライン掲載されました。

※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

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