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青柳 優太さん、佐竹 教授らの研究グループが樹木の種でコピー数が増えている DNA 修復遺伝子を発見しました。

  • 2021年7月12日(月)

 2000 年以上生き続ける屋久島の縄文杉など、植物には非常に長い寿命を持つ種が存在します。 長く生きることによって、紫外線や細胞の代謝の過程で発生する活性酸素などへ長期間暴露されるため、遺伝情報を担う DNA の損傷が蓄積し、動物ではそれが老化や細胞のがん化につながります。なぜ植物は長く生き続けることができるのでしょうか?

 九州大学 大学院システム生命科学府の青柳 優太 大学院生、同大学 比較社会文化研究院の楠見 淳子 准教授、同大学 理学研究院の佐竹 暁子 教授らの研究グループは、長寿命の植物種では短命の種より DNA 修復遺伝子のコピー数が多くなると考えました。それは多くの DNA 修復遺伝子を持つことによって、DNA 損傷は効率的に修復され、遺伝情報を守ることができるからです。研究グループは、樹木・多年草・一年草を含む 61 種の植物において 121 種類の DNA 修復に関わる遺伝子ファミリーに含まれるコピー数を網羅的に比較した結果、ポリ ADP リボースポリメラーゼ (PARP) だけ、樹木において短命の一年草や多年草よりも有意にコピー数が多いことを発見しました。特に、ベイマツなどの長寿の樹木でコピー数の顕著な増大が見られました。さらに、植物の成長率と PARP 遺伝子コピー数の間には負の関係が存在することも見いだされました。

 PARP 遺伝子は動物も植物も共通して保持している遺伝子で、DNA 修復において重要なはたらきを持つだけでなく、アスコルビン酸などの生合成促進によって病原体への防御にも関わっていることが知られています。樹木における PARP 遺伝子コピー数の増加は、樹木が DNA 損傷や病原体の感染から長期間身を守り、生存を維持するのに貢献していると考えられます。一方で、DNA 修復や病原体の防御への投資は成長を抑制するため、緩やかに成長する種においてのみ長寿命性が実現されると予想されます。本研究の成果により、長寿命性の進化に関する今後の研究が一層加速されることが期待されます。

 本研究成果は、2021 年 6 月 24 日に科学雑誌「iScience」で公開されました。

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