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宮崎 栞さん、宮田 助教、恩田 教授らの研究グループが発光性希土類錯体におけるエネルギー移動の機構を解明しました。

  • 2020年10月16日(金)

 九州大学 理学研究院の宮崎 栞 修士課程学生、宮田 潔志 助教、恩田 健 教授らの研究グループは、北海道大学 大学院工学研究院の長谷川 靖哉 教授、北川 裕一 特任講師らと共同で、1000 億分の 1 秒の時間分解能で発光過程を追跡することにより、希土類金属錯体を用いた高効率有機発光体の錯体内エネルギー移動機構の解明に成功しました。

 発光性希土類金属錯体は、色純度の高い発光を示すことから有機 EL パネルなどの発光材料としての応用が期待されています。実用的な発光材料開発のためには高効率な錯体内エネルギー移動の実現が重要となりますが、詳細な機構が不明であることが開発のボトルネックとなっていました。これは希土類金属錯体の性質が一般の金属錯体とは大きく異なるため、エネルギー移動を伴う発光過程が非常に複雑となっていることに原因があります。そこで本研究では、独自に高時間分解能発光分光装置を改良・開発し、高効率赤色発光を示す三価ユウロピウム (Eu3+) 錯体において錯体内エネルギー移動に伴い逐次的に起こる発光過程を実時間観測しました。その結果、異なる速さをもつ二種類のエネルギー移動機構が存在し、これが高効率発光の起源の一つであることを見出しました。今回明らかになったエネルギー移動機構を基にすることで、希土類金属錯体を用いた新たな高効率有機発光材料を戦略的に設計できるようになると期待されます。

 本研究は主に科研費 (JP17H06375、JP18H05170) の支援を受けて実施しました。

 本研究成果は 2020 年 7 月 27 日 (月) に、アメリカ化学会の学術誌「The Journal of physical Chemistry A」のオンライン版で公開され、表紙絵 (Supplementary cover) にも選出されました。(https://doi.org/10.1021/acs.jpca.0c02224)

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