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庭瀬 暁隆さんが日本放射化学会第 64 回討論会「若手優秀発表賞」を受賞しました。

  • 2020年9月28日(月)

 大学院理学府 物理学専攻 博士後期課程 3 年の庭瀬 暁隆さんが日本放射化学会第 64 回討論会「若手優秀発表賞」を受賞しました。この賞は、日本放射化学会第 64 回討論会 (2020) において、優秀な発表を行った若干名の若手研究者に贈られるものです。

受賞者

庭瀬 暁隆 (大学院理学府 物理学専攻 博士後期課程 3 年)

研究テーマ

MRTOF + α−ToF による 257Db の直接質量測定

研究概要

 原子核質量は核子間相互作用を議論するための最も基本的かつ重要な物理量である。質量は核種固有の値であるため、精密な質量分析から原子核の原子番号と質量数の一意な識別が可能となる。超重核は極めて小さな生成断面積に起因して一度に取り扱える量が少なく、その質量は質量既知核からの α 崩壊連鎖の Q 値を辿ることによる、間接的な決定しかなされていない。我々は超重核の直接質量測定に向けて、重核の飛行時間とそれに相関した α 崩壊を測定することができる革新的な検出器 α-TOF の開発を行った。この開発によって、非常に稀な事象においても確度の高い実験が可能になった。

 我々は初の超重元素の質量測定実験として、208Pb (51V, 2n) 反応によって合成された 105 番元素 257Db の質量測定を行った。合成された 257Db は気体充填型反跳分離装置 GARIS-II によって分離され、ガスセルと RF イオントラップによって多重反射型飛行時間測定式質量分光器 MRTOF へと輸送し、質量を測定した。MRTOF にはイオン検出器として α-TOF が組み込んであり、257Db の飛行時間とそれに起因した α 崩壊の相関測定を行った。

 総計 4 日間のビーム照射で、11 個の 257Db および娘・孫核の α 崩壊イベントに相関した飛行時間信号を取得した。崩壊に標識付けられた確度の高い 11 個の飛行時間信号から質量を導出し、世界初となる超重核の直接質量測定に成功した。また、これらの結果と理論計算との比較から、合成した超重元素の原子番号・質量数の同定には 1 イベントあれば充分であるということを実験的に明らかにした。

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