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奥本 助教らの研究グループが世界で初めて細胞内外の環境変化・酸化ストレスへの生体防御応答システムはペルオキシソーム形成因子 Pex14 のリン酸化が担うことを発見しました。

  • 2020年9月8日(火)

 細胞内小器官ペルオキシソームの形成を担うペルオキシン Pex14 がリン酸化による修飾を受けることは、酵母から哺乳動物細胞系において広く示されていましたが、その生理的な役割は長年にわたり全く不明のままでした。

 九州大学 生体防御医学研究所の藤木 幸夫 特任教授 (研究当時) と基幹教育院の田村 茂彦 教授らの研究グループは、細胞周期の中でも特に分裂期特異的にヒト Pex14 の Ser232 がリン酸化されることを見出し、このリン酸化によってペルオキシソーム移行シグナル 1 型受容体によるカタラーゼ輸送能が低下するとともに細胞質 (サイトゾル) でのカタラーゼを増加させることで活性酸素種に対する防御メカニズムとして働くことを明らかにしました。すなわち、核膜が消失した分裂期ではカタラーゼを介した DNA の活性酸素種からの保護など、Pex14 のリン酸化修飾は他のオルガネラと協調して細胞恒常性を維持するために重要な役割を果たすことを発見しました (Yamashita et al., J. Cell Biol.)。(https://doi.org/10.1083/jcb.202001003)

 また、上記の成果とほぼ同時に、藤木 特任教授 (研究当時) と大学院理学研究院の奥本 寛治 助教らの研究グループは、過酸化水素などの酸化ストレスも Pex14 のリン酸化を誘導し、カタラーゼの輸送を選択的に抑制することを見出しました。つまり、Pex14 のリン酸化がサイトゾル局在性カタラーゼの増加をもたらすという細胞の酸化ストレス耐性戦略を発見しました (Okumoto et al., eLife) 。(https://doi.org/10.7554/eLife.55896)

 本研究の成果は、細胞のストレス毒性に対するペルオキシソームの抗ストレス機能の解明に繋がるだけでなく、活性酸素種が関与する病気や老化の進行等に対する今後の治療法開発や創薬研究への展開が大きく期待されます。

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