HOME > 広報 > トピックス > 2019年10月24日(木)

宇都宮准教授らの研究グループが福島原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子の個数、放射能寄与率の分布図を初めて作成しました。

  • 2019年10月24日(木)

 九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授、理学府の池原遼平 (H31.3 卒)、諸岡和也 (修士 1 年) らの研究グループは、福島第一原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子 (CsMP) の簡易定量法「QCP 法」を原発周辺 〜 福島県内の土壌に適用して、CsMP の個数と放射能寄与率 (RF 値: 全 Cs 放射能に対する CsMP の放射能の割合) を放射能測定マップ上に示しました。全 Cs 放射能から CsMP の放射能を引くと水溶性 Cs の放射能になります。また、定量結果から CsMP 放出のタイミングや放出源が推定されました。筑波大学、東京工業大学、エネルギー総合工学研究所、国立極地研究所、Helsinki 大学、Nantes 大学、Stanford 大学との共同研究の成果です。

2011 年の福島原子力災害により放出された CsMP は数ミクロン程度と小さいですが、通常の汚染土壌と比べて単位質量あたりが非常に高い放射能 (〜1011 Bq/g) を持つため、局所的な放射線の影響が懸念されています。CsMP を含む放射性セシウムはプルームと呼ばれる大気の流れに乗って煙のように流れていく現象により拡散しました。本研究では 20 地点の土壌を分析し、原発から近いところでは CsMP の個数が多いにもかかわらず RF 値は低く、水溶性セシウムの寄与が大きいことが分かりました。北西方向では、CsMP と水溶性セシウムがどちらも寄与しています。これは 9 つの主要なプルームのうちプルーム 3 と 8 の軌跡に相当します。一方、南西方向では放射能は低いですが、RF 値は 80% 程度と高くなりました。これはプルーム 2 の軌跡に相当します。この結果から CsMP は 2011 年 3 月 14 日 〜 15 日にかけてのごく短い期間に形成されて放出されたこと、初期は福島第一原発 3 号機から CsMP が放出されたことが推定されました。

本研究は、文部科学省の科学研究費挑戦的萌芽研究 (16K12585)・公益財団法人三菱財団自然科学研究助成 (29102) の支援を受けて行われたものです。また、本研究成果は、2019 年 10 月 11 日 (金) (日本時間) に国際環境科学誌「Chemosphere」に掲載されました。(https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2019.125019)

※本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

関連先リンク