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奈良岡教授らの研究グループが星間分子雲における核酸塩基生成に世界で初めて成功しました。

  • 2019年10月1日(火)

 北海道大学低温科学研究所の大場康弘助教、海洋研究開発機構の高野淑識主任研究員、九州大学大学院理学研究院の奈良岡浩教授らの研究グループは、実験室内で極低温・超高真空の宇宙空間を再現し、水と一酸化炭素、メタノール、アンモニアで構成される氷薄膜内の光化学反応によって、遺伝物質である核酸の構成成分の一つ、核酸塩基が生成可能であることを世界で初めて確認しました。

星が誕生する前の宇宙空間には、水素を主成分とする多様なガスと、星間塵と呼ばれる氷微粒子で構成される領域 (星間分子雲) があります。星間分子雲は -263℃ という極低温にもかかわらず、活発な化学反応の場であることが知られています。これまでの研究においては、紫外線や宇宙線という宇宙における普遍的なエネルギー源を用いた化学反応が検証され、たんぱく質の主成分であるアミノ酸など、生体関連分子が生成可能であることがわかっていました。近年の実験・分析技術の発展により、生命の遺伝情報を担う核酸 (DNA・RNA) の構成成分 2 種 (糖・リン酸) の生成も確認されるようになりましたが、残る一つの成分、核酸塩基についてはそうした宇宙の極限環境で生成可能かどうかは実証されていませんでした。

そこで本研究では、星間分子雲における氷微粒子の光化学反応を再現し、超高分解能質量分析計を駆使した分析を行いました。その結果、得られた生成物から初めて核酸塩基を検出することに成功し、核酸の構成成分すべてが生成可能であることを実証しました。本結果は、太陽系形成時にどのような有機化合物が存在したのか、それらは地球上での生命誕生にどのように寄与したのかなど、人類にとっての根源的な疑問を紐解くカギとなることが期待されます。

なお、本研究成果は、日本時間 2019 年 9 月 27 日 (金) 午後 6 時 (英国夏時間 2019 年 9 月 27 日午前 10 時) 公開の「Nature Communications」誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1038/s41467-019-12404-1)

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