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前多准教授、Ziane Izri 学術研究員らの研究グループが遺伝情報・脂質膜・エネルギー供給を備えたオンチップバイオリアクターを開発しました。

  • 2019年7月19日(金)

 生命の基本単位は、細胞です。この細胞は脂質膜で囲まれたミクロンサイズの小さなカプセルであり、DNA に設計図となる遺伝情報が保持されています。現実の細胞を模倣しながら可能な限り単純なバイオリアクターを創ることは、細胞の設計原理を理解するのみならず有用な生体材料を創出する重要な課題です。

九州大学大学院理学研究院物理学部門の Ziane Izri 研究員と前多裕介准教授の研究グループはミネソタ大学物理学科の Vincent Noireaux 教授と共同で、脂質膜の境界を持ち、エネルギーのやり取りをしながら自律的に遺伝子発現するバイオリアクター「オンチップ膜融合型人工細胞, On-chip membrane-bound artificial cells」を開発しました。直径 25μm サイズのマイクロウェルを平面脂質膜でシールし、5000 個の人工細胞が集積したデバイスにおいて 24 時間以上に渡って安定して遺伝子発現が行われることを確認しました。従来技術を越える大規模計測から、1 mg/mL を越える世界最高レベルのタンパク質合成量を示すことを明らかにし、この遺伝子発現能力を発揮するためにはエネルギー供給のバランスを担う脂質膜の界面が不可欠であることがわかりました。

今回構築したオンチップ膜融合型人工細胞は、最小限の要素で人工的な細胞を構築する合成生物学の研究を加速させると期待されます。また、マイクロ流体デバイスと無細胞系の遺伝子発現を活用し、転写翻訳系、膜機能、細胞骨格形成などの生体機能に関わる薬剤や抗生物質のスクリーニングといった応用につながると期待できます。本研究成果は、2019 年 7 月 4 日 (木) (日本時間) に米国科学雑誌「ACS Synthetic Biology」 のオンライン速報版に掲載されました。(https://doi.org/10.1021/acssynbio.9b00247)

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