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町田准教授と松下さんらの研究グループが赤ちゃん星から聞こえた「ふたつの産声」を観測しました。

  • 2019年2月27日(水)

 星は、赤ちゃんが放つ産声のごとく、誕生して間もないころにガスを噴き出します。そのガス流は、原始星 (赤ちゃん星) の成長に大きな影響を与え、その後の星の進化を理解する上で非常に重要です。このたび、九州大学理学府地球惑星科学専攻の松下祐子氏 (博士 2 年)、理学研究院の町田正博准教授と、国立天文台の高橋智子助教、富阪幸治教授らの研究グループは、アルマ望遠鏡を使ってオリオン座にある原始星 MMS5/CaOMC-3 を観測し、この星から噴き出す高速で細いガス流と低速で広がりをもつガス流の分布を明らかにしました。その結果、2 つのガス流は速度と形状が異なるだけではなく、ガス流同士の噴き出す角度が 17 度異なることを発見しました。さらに、ガス流の速度を分析したところ、低速のガス流の方が高速のガス流よりも先に放出が始まったことも分かりました。

 原始星に、ガス流が 2 種類存在することは以前から分かっていましたが、なぜ 2 種類あるのかは謎でした。「高速のガス流が周囲のガスを巻き込むことで低速のガス流を作り出す」という説と、「高速のガス流と低速のガス流がそれぞれ独立して噴き出す」という 2 つの説があり、どちらが正しいのかを判断することは困難でした。今回、アルマ望遠鏡の高解像度観測によって、後者の説で赤ちゃん星からのふたつの産声を説明できることが分かりました。また、この観測結果は、近年の理論シミュレーションとも良く合うことが分かりました。これらは、星がどのように生まれるかの有力な手がかりになります。

 本研究は JSPS 科研費補助金 (17K05387, 17H06360, 17H02869, 15K05032) および合同アルマ観測所サイエンスビジタープログラムの助成を受けました。

本研究成果は「A Very Compact Extremely High Velocity Flow toward MMS 5/OMC-3 Revealed with ALMA」として『The Astrophysical Journal』誌にて 2019 年 2 月 1 日 (金) にオンライン掲載されました。(https://doi.org/10.3847/1538-4357/aaf1b6)
また、アメリカ物理学会が発行する『PHYSICS TODAY』に topic として取り上げられました。(https://physicstoday.scitation.org/do/10.1063/PT.6.1.20190314a/full/)

※本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

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