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光田准教授らの研究グループが鉄鋼材料において水素による異常な変態抑制効果を発見しました。

  • 2018年11月5日(月)

 九州工業大学大学院生命体工学研究科の平田 研二 (ひらた けんじ) 大学院生 (現: 産業技術総合研究所)、飯久保 智 (いいくぼ さとし) 准教授および九州大学大学院工学研究院の小山 元道 (こやま もとみち) 助教、津﨑 兼彰 (つざき かねあき) 教授、安部 祐司 (あべ ゆうじ) 大学院生は、九州大学大学院理学研究院の光田 暁弘 (みつだ あきひろ) 准教授らと共同で、立方晶 fcc 構造を有する鉄鋼において、水素含有量が増加するほど六方晶 hcp 相の生成が抑制されることを世界で初めて発見しました。

鉄鋼の強さと機能性は、結晶構造の制御によって最適化されています。結晶構造は、鉄に添加する元素の種類や量によって変わります。例えば、fcc や hcp などの結晶構造の安定性を制御するために、従来は添加元素として炭素や窒素などが利用されています。水素も多量に存在する元素ですので、これまでに fcc に対する hcp の相安定性が半世紀にわたり調査されてきました。従来研究によると、水素は fcc → hcp 結晶構造変化を「促進」することが定説とされます。

しかし、本研究で水素を含ませた鋼材を作製し、fcc-hcp 変態※1)の挙動を調査したところ、水素が fcc → hcp 結晶構造変化を「顕著に抑制」することが見出されました。これは世界で初めて観測された現象であり、fcc 鋼で水素が fcc-hcp 構造変化に与える影響の常識を打ち破るものです。水素はクリーンな資源として注目が集まっており、水素による鉄鋼の結晶構造制御は、今後、新たな鉄鋼材料創製につながると期待されます。

この研究成果はネイチャー・パブリッシング・グループの学術誌「Scientific Reports」のオンライン版で 10 月 31 日に掲載されました。(https://doi.org/10.1038/s41598-018-34542-0)

※1) 昆虫で、成長にともない幼虫-蛹-成虫と形や構造が変わることを変態と呼びますが、金属固体でも条件によって構造が変わります。金属固体の構造は結晶として表現できますが、雪の結晶が色々あるように金属固体の結晶構造にも色々とあります。この中で、鉄は温度や圧力条件によって立方晶の fcc や bcc、また六方晶の hcp の結晶構造をとります。この結晶構造の変化のことを変態と呼びます。

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