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祢冝准教授と射場教授らの研究グループが、なぜ気孔には葉緑体があるのか ? という植物科学の長年の謎に迫りました。

  • 2018年8月22日(水)

 植物は陸上に進出する際に、水分蒸発を防ぐためにクチクラ層を生み出しましたが、同時に CO2 の体内への取り込みや蒸散を行うために体表面に「気孔」を発達させました。気孔の細胞 (孔辺細胞) は葉緑体をもつことが知られていますが、その成り立ちや機能については詳しいことは分かっていませんでした。

 今回、九州大学大学院理学研究院の祢冝 淳太郎 准教授と射場 厚 教授、及びカリフォルニア大学サンディエゴ校の Julian Schroeder 教授、埼玉大学の西田 生郎 教授らの研究グループは、モデル植物シロイヌナズナを使った遺伝学的解析から、孔辺細胞の葉緑体が、他の光合成細胞とは異なり、葉緑体の祖先とされる光合成細菌 (シアノバクテリア) から引き継いだ脂質代謝経路 (原核経路) を退化させ、宿主である真核細胞の脂質代謝経路 (真核経路) が中心となって葉緑体の形成や機能を維持していることを突き止めました。また、この孔辺細胞の葉緑体が形成されなくなると、CO2 による気孔開閉応答が抑えられることも明らかにしました。これらの研究結果は、孔辺細胞の葉緑体が独自の脂質代謝バランスを発達させており、植物の CO2 感知機構に重要な働きをしていることを初めて明らかにしたものです。本研究で得られた知見は、植物科学の長年の謎であった気孔の葉緑体の存在意義を解き明かすだけではなく、近年急激に上昇している大気 CO2 濃度が農作物に及ぼす影響を理解するうえでも、有用な情報となることを期待しています。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」のオンライン版に掲載されました。(https://doi.org/10.1073/pnas.1810458115)

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