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宇都宮准教授、落合さんらの研究グループが福島原発由来のウラン酸化物を初めて発見し原子レベルでの解析に成功しました。

  • 2018年2月21日(水)

 九州大学大学院理学研究院 宇都宮 聡准教授、理学府修士 2 年の落合 朝須美さんらの研究グループは、福島県の土壌から福島第一原発のメルトダウン時に形成された核燃料成分であるウラン (U) 酸化物を含む粒子を初めて発見し、超高分解能電子顕微鏡を駆使した原子レベルでの解析に成功しました。筑波大学、東京工業大学、Manchester 大学、Nantes 大学、Stanford 大学とともに原子力災害からの復興に貢献することを目指して行われた共同研究の成果です。

 2011 年の福島原子力災害により放出された放射性セシウムの一部は水に溶けにくい高濃度放射性セシウム含有微粒子 (CsMP) として環境中に放出されました。現在も残る CsMP 自体がメルトダウン時の炉内の情報をそのまま記録している媒体となります。本研究では球面収差補正透過型電子顕微鏡を駆使して、CsMP とともに存在する 2 種類のウラン酸化物ナノ粒子を分析しました。燃料の主成分である UO2+X の構造をもつ最大 70 nm の大きさのナノ結晶が鉄酸化物に包まれた状態、燃料の被覆材であるジルコニウム (Zr) との共融混合物 (U,Zr)O2 の状態として存在することが明らかになり、メルトダウン時に炉内で溶けた燃料がどのような挙動をとったのか、その一部を把握することができました。これらの成果は、未だ放射線量が高くて近づくことのできない炉内に残された燃料デブリ(溶けた燃料と原子炉構造物の混合物)の性質を部分的にですが示すものであり、これから長期にわたる廃炉工程において最も困難な工程である燃料の取り出しのために必要なデブリ性状把握に貢献できると期待されます。

 本研究は、文部科学省の科学研究費挑戦的萌芽研究 (16K12585)・公益財団法人三菱財団自然科学研究助成 (29102) の支援を受けて行われたものです。また本研究成果は、2018 年 2 月 13 日 (火) にアメリカ化学会誌「Environmental Science & Technology」に掲載されました。(https://doi.org/10.1021/acs.est.7b06309)

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