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鈴木 博 教授が「日本物理学会 第20回論文賞」を受賞しました。

  • 2015年4月16日(木)

 このたび、大学院理学研究院物理学部門の鈴木 博 教授が「日本物理学会 第20回(2015)論文賞」を受賞しました。

 本賞は、日本物理学会において独創的な論文の発表により、物理学の進歩に重要な貢献をした研究者の功績を称えるために制定されたものです。

受賞者

鈴木 博 (大学院理学研究院物理学部門 教授)
「Chern Numbers in Discretized Brillouin Zone: Efficient Method of Computing (Spin) Hall Conductances」

受賞理由(研究概要)

 固体中の電子のトポロジカル状態は、電子物性の新しい理解のあり方として、あるいは将来的な応用にもつながりうる新物性発現の指針として注目され、その研究は物性物理学の理論研究における大きな潮流となりつつある。特に最近では具体的な物質を想定したモデル計算や第一原理に基づく電子状態計算を使って、トポロジカル状態を実現する新物質の提案まで行われるようになってきた。 これらの計算でトポロジカル状態かどうかを理論的に判定するには、逆格子空間での積分量で表されるトポロジカル数(Chern Number)の計算が不可欠であるが、従来用いられていた離散化による数値積分手法は、ゲージ不変性に関する基本的困難に加え、積分に用いる離散点の数に対する収束性が極めて悪いこと、すなわち多くの離散点の情報が必要であることが深刻な問題となっていた。

 これに対して本論文は、格子ゲージ理論の手法を応用して、離散点の情報を用いてゲージ不変性を破ることなくトポロジカル数の計算を実現し、かつ、その収束性を改善する方法を提案した論文である。新手法は簡単かつ実装が容易で、効果は劇的であり、トポロジカル状態の研究に本質的な寄与をする手法提案である。本論文は発表後10年が経過しているが、近年急激に認知度が上がり、当研究分野で世界中の研究者によって幅広く活用されるようになった。アイデアの斬新さにおいても、トポロジカル絶縁体・超伝導体の分野への貢献度の高さにおいても秀でており、日本物理学会論文賞に相応しい卓越した論文である。

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