九州⼤学 ⼤学院理学研究院の徳永 信 教授、⼭本 英治 助教、理学府 修⼠課程 2 年 髙城 悠太 ⽒、福岡⼯業⼤学 ⼯学部の蒲池 ⾼志 教授、DIC 株式会社 松枝 宏尚 ⽒らの研究グループは、コバルト酸化物を触媒として⽤いることで、アルケン、単体硫⻩、⽔素と、シンプルで安価な原料からジアルキルポリスルファン類を効率的に合成することに成功しました。
ジアルキルポリスルファン類は、⼆つ以上の硫⻩原⼦が連結した化合物で、切削加⼯において装置の摩耗を防⽌する⽬的で使⽤される潤滑油の極圧添加剤として広く利⽤されている重要な化合物です。⼯作機械による⾦属加⼯などで年間数万トンの需要があります。現在、この化合物はアルケン、単体硫⻩に加え、還元剤として硫化⽔素を原料とする触媒的合成法で製造されていますが、この硫化⽔素は極めて⾼い毒性をもつため、⼊⼿経路が限られる上、⾼い管理コストが必要となるなどの問題がありました。
本研究では、無溶媒条件において、コバルト酸化物触媒存在下、単体硫⻩、⽔素加圧下 (3–5 MPa) でジイソブテン (DIB) と作⽤させることにより、対応するジアルキルポリスルファン類を⾼収率で得ることに成功しました。また、反応後、⽣成物と触媒は容易に分離回収可能で、回収⽣成物は、現⾏法の製品とほぼ同等の性能を⽰し、回収触媒は何度も再利⽤することが可能です。
これにより、従来の⼯業的製造法において還元剤として利⽤されてきた硫化⽔素に代わって、毒性が無く、安価な⽔素ガスを活⽤し、効率的にジアルキルポリスルファン類の合成が可能であることが⽰されました。今回、開発した⼿法では原⼦効率の⾼い反応剤である、単体硫⻩と⽔素ガスを組み合わせた珍しい反応系で、今後、様々な有機硫⻩化合物の効率的合成の開発が期待されます。本研究はアメリカ化学会の国際学術誌「ACS Catalysis」の電⼦版 (投稿原稿) に 10 ⽉ 19 ⽇ (現地時間) に掲載されました (https://doi.org/10.1021/acscatal.3c03545)。
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