五島列島は日本列島で最もユーラシア大陸に近い場所に位置し、ユーラシア大陸との関連性が最も詳細に残される地域です。四方を海に囲まれる島々は、荒波にもまれて広く岩石が露出し、高精度の地質記録が詳細に残る希な場所になっています。しかし、1960 年代以降の詳細な地質調査記録がなく、島全体の大地 (地質記録) を統合的に考察していなかったため、ユーラシア大陸との関係は不明でした。
五島列島は、日本海拡大前にはアンデス山脈の様な沈み込みに伴う陸弧であり、それが拡大して大地が割れ、北部ですでに形成していた日本海に、大陸の割れ目をつたって大量の土砂を供給していた場所であることが明らかになりました。
九州大学 大学院理学研究院の清川 昌一 准教授の研究グループは、学生らとともに 2004 年から五島列島 (五島市および新上五島町全体) についての詳細な地質調査を行い、地質図、断面図、柱状図を作成しました。また、様々な年代測定を行い、地層がいつ堆積したか推定しました。これにより、五島列島を形成する基盤である五島層群が約 2200 万年から 1700 万年前の間に堆積し、それらが火山活動の合間に 2 回の大きな伸張作用による地殻変動を経て現在に至ることを明らかにしました。
この成果は、日本海拡大以前のユーラシア大陸縁辺部の陸弧の状態が日本国内に残っていることを具体的に示した初めての例になります。海洋プレートが大陸プレートに沈み込むときに、陸側縁辺部で起こる大地の割れていく様子の一般的な例として注目に値します。
本研究成果は日本地質学会が発行する国際誌「Island Arc」に 9 月 17 日よりオープンアクセスで掲載されています。(https://doi.org/10.1111/iar.12456)
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