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学生の皆さんへのメッセージ

グローバル ブリッジ オフィスメンバー 

秋山 良 准教授 (化学部門) 

 海外に少し長めに滞在した者として思う事があります。それは留学にトライする学生自身の心構えとしては『海外で成果が上がるかどうかは、まずは気にし過ぎない方が良いのでは無いか?』という事です。(もちろん頑張ってもらう事は悪く無いのですが。)その経験を元に、学生自身が『複数の自分軸』をこしらえる事に意義があると思うのです。どんな軸が出来るかは、飛び込んでみないと分からないものでしょう。そして、一度ゆけば、垣根は低くなります。仮に『日本でうまくいかなくても、海外があるさ。』と思えるだけで、随分閉塞感がなくなります。まして、『日本でこれができるなら、海外と結べばどうなるのだろう。』と思う事ができれば、素晴らしいことでしょう。いずれにしても楽天的でいられる可能性を増やしてくれると思うのです。

 ここで、上の話に繋がることを書きましょう。私には、学生としての留学経験はありません。修士の時に指導教員から『アメリカの大学院に行ってみないか?』と具体的に聞かれた事が 1 度ありましたが、その時はとても現実的な問題だとは思えませんでした。周囲に留学経験どころか、海外での研究会議に出席した学生もいなかった事が留学を現実的に捉えられなかった原因だと思います。つまり、私は当時居た場所の『常識』に縛られていたのです。居心地の良い常識に囚われ、楽しい可能性は見えていなかったのです。居心地が良い事は必ずしも楽しいこととは違いますからね。いずれにしても、その評価軸自体が私になかったのですから、見えなくて当然です。

 私が海外に比較的長く滞在した時期は、博士研究員時代です。日本学術振興会の海外特別研究員の制度でコーネル大学にゆき、海外学振終了後も少し追加で受け入れ先で雇っていただきました。『出発時に他に選択肢がなかった。』という事もありますが、申請時に所属していた分子科学研究所に『海外は近い』という雰囲気があった事が大きかったと思います。つまり、学生時とは別の『常識』に少し触れた事がきっかけになったわけです。それが、私が特定の文化から見て『非常識』、、、もう少し正確に言えば、『複数の常識を持つ』可能性を与えてくれたのだと思います。

モンブラン登山
モンブラン登山

 理学研究院グローバル ブリッジ オフィスでは、学生の皆さんの留学や国際的な研究活動の支援、、、つまり、上で述べた意味での『複数の軸』へのきっかけを作る支援を行っています。『複数の軸』は自分自身を折れにくく、頑丈にしてくれるでしょう。もちろん、多様な文化の承認は既存のコミュニティの『常識』を破壊する潜在力も持ちます。それをネガティヴに捉える向きもあるでしょう。しかし、より多様な『常識』を認める価値観の方に私は可能性を感じます。少なくとも大学の様な場は、そうあるべきなのだと私は思います。