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久我 立さん、粕谷 准教授、佐竹 教授らの研究グループが逃避する動物が見せる目立つ行動に性差が生じる要因を解明しました。

  • 2021年10月4日(月)

 チーターから逃げるトムソンガゼルが 4 つ足で真上に跳ねるストッティングや、ヒトから逃げるショウリョウバッタが発するキチキチという音など、逃げる時に目立つ行動をする動物は数多く存在します。一見すると捕食者の注目を集めてしまうようにも思われる目立つ逃避は、逃避能力の高さをアピールして追跡をあきらめさせたり、突然目立つ逃避を止めることで目をくらませたりして、被食者の生存に有益な効果をもたらすと考えられています。ただし、目立つ逃避をする動物では、同じ種内でオスとメスで目立つ逃避をする頻度が異なることがこれまでに報告されていました。極端な例として、ショウリョウバッタのキチキチ音はオスのみで観察され、メスでは観察されていませんでした。また、オスが発音せずに逃避する場合も観察されていました。なぜ、目立つ逃避を使用する頻度にこのようなオスとメスの差 (性差) が生じているのでしょうか?

 九州大学 大学院システム生命科学府の久我 立 大学院生、大学院芸術工学院の関 元秀 助教、大学院理学研究院の粕谷 英一 准教授、佐竹 暁子 教授は共同研究によって、被食者が目立つ逃避のために進化しうる性差の種類と、その進化に必要な条件を理論的に明らかにしました。目立つ逃避が被食者の生存に有益な効果をもたらすとしても、その行動に要する繁殖上のコストや捕食されやすさに性差がある場合、目立つ逃避の有無に性差が生じました。同じ性内で目立つ逃避をする場合としない場合が生じるのは、ある個体が目立つ逃避をすることでその個体の近くにいる他個体の捕食されやすさも下がる場合でした。本研究は目立つ逃避の性差を生じる条件について初の理論的な枠組みをもたらしており、今後の目立つ逃避の機能を探る実証研究を促進することが期待されます。

 本研究成果は、2021 年 8 月 16 日に科学雑誌「The American Naturalist」にオンライン速報版で掲載されました。(DOI:10.1086/715745) また、本研究は、日本学術振興会科学研究費 (JP19K16242) の支援により行われました。

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