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宇都宮 准教授、栗原 英太郎さんらの研究グループが福島第一原発から放出された微粒子状プルトニウムの姿をとらえました。

  • 2020年7月14日(火)

 九州大学大学院理学研究院 宇都宮 聡 准教授、理学府修士課程 (研究当時) の栗原 英太郎らの研究グループは、これまで存在が予想されながらもその粒子の細かさから解析が難しかったプルトニウム (Pu) 含有燃料微粒子を含む粒子を福島県の土壌から初めて発見し、多角的な先端微細分析を駆使してナノレベルでの解析に成功しました。国立極地研究所、筑波大学、東京工業大学、フィンランド Helsinki 大学、スイス Paul Scherrer 研究所、英 Diamond 放射光、仏 Nantes 大学、米 Stanford 大学とともに原子力災害からの福島の復興に貢献することを目指して行われた共同研究の成果です。

 2011年におきた原子力災害により、一部の放射性セシウムが水に溶けにくい高濃度放射性セシウム含有微粒子 (CsMP) として環境中に放出され、関東地帯まで拡散しました。本研究は CsMP から燃料微粒子を発見し、最先端の二次イオン質量分析やシンクロトロン放射光マイクロビームX線分析、原子分解能電子顕微鏡を駆使してウラン (U) と Pu の同位体分析、化学種の同定を行いました。その結果、CsMP 内部に U(IV)O₂ ナノ結晶を同定するとともに、U 濃集部における Pu、ジルコニウム (燃料被覆管の成分) の局在化を示すことに成功しました。さらに、燃料微粒子中の U と Pu の同位体比 235U/238U、 240Pu/239Pu、そして 242Pu/239Pu はそれぞれ 〜0.0193、〜0.347、〜0.065 と決定され、計算コードで算出された照射燃料の値と一致しました。

 これらの結果から、Pu は燃料微粒子として CsMP に取り込まれて環境中に放出・拡散されたこと、かつ、炉内に残された燃料デブリ中において Pu がナノスケールで不均質に分布することを部分的にですが直接示すものであり、これから長期にわたる廃炉工程・燃料の取り出しのために必要なデブリ性状把握に貢献できると期待されます。

 本研究は、文部科学省の科学研究費挑戦的萌芽研究 (16K12585)・公益財団法人三菱財団自然科学研究助成 (29102) の支援を受けて行われたものです。また本研究成果は令和 2 年 7 月 12 日 (日) (日本時間) に「Science of the Total Environment」に掲載されました。(https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.140539)

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