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岩本特任助教、岩見准教授らの研究グループが B 型肝炎ウイルスの細胞内侵入経路を解明しました。

  • 2019年4月5日(金)

 九州大学大学院理学研究院の岩本将士特任助教、岩見真吾准教授、国立感染症研究所の渡士幸一主任研究官らの国際共同研究グループ (日本とフランスの共同研究) は、B 型肝炎ウイルス (HBV) が細胞へ感染する仕組みを新たに解明しました。

 HBV の持続感染者は世界でおよそ 2 億 6 千万人、日本で 100 万人にのぼると推計されており、肝硬変や肝細胞がんの主要原因となります。HBV は肝細胞表面に存在するナトリウムタウロコール酸共輸送体 (NTCP) に結合することで標的肝細胞に吸着しますが、その後どのように細胞内へ侵入するかはこれまで明らかでありませんでした。研究グループは独自の HBV 感染実験系を用いて、上皮成長因子受容体 (EGFR) が HBV の細胞内侵入を媒介することを明らかにしました。NTCP と EGFR はもともと細胞表面から内部までを共に移動していますが、HBV はこれに「乗車」することで細胞内部まで効率よく到達すること、EGFR と NTCP の共動関係を解消すれば HBV は受容体 NTCP に結合したまま細胞内部へは至らないことが示されました。EGFR は抗がん剤の標的としても知られており、既存の EGFR 標的薬が HBV 感染を阻害することも明らかになりました。この研究成果は HBV 感染機序の理解を深めるだけでなく、新規 HBV 治療薬の開発に大きく貢献すると期待されます。

本研究の一部は、日本医療研究開発機構 (AMED) 感染症研究革新イニシアティブ「ウイルス感染ネットワークの動的制御による持続感染の運命決定機構」(研究開発代表者 渡士幸一)、肝炎等克服実用化研究事業「ケミカルバイオロジー・数理解析を利用した B 型肝炎創薬研究」(研究開発代表者 渡士幸一) の支援を受けています。

本研究成果は、2019 年 4 月 1 日 (月) 午後 3 時 (米国東部時間) に米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1073/pnas.1811064116)

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