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宇都宮准教授、池原さんらの研究グループが福島原発から飛散した高濃度放射性セシウム含有微粒子の定量法を開発しました。

  • 2018年5月23日(水)

 九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授、理学府修士2年の池原遼平らの研究グループは、福島第一原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子 (CsMP) の簡易定量法「QCP 法」を開発しました。筑波大学、東京工業大学、Manchester 大学、Nantes 大学、Stanford 大学との共同研究の成果です。

 2011 年の福島原子力災害により放出された放射性セシウムには水に溶けやすい形態と溶けにくいガラス質の CsMP の二種類があります。CsMP は数ミクロン程度と小さいですが、通常の汚染土壌と比べて非常に高い放射能密度 (~1011 Bq/g) であり、その性質を利用して CsMP の分別方法を考案しました。本論文では、オートラジオグラフィーという放射能を可視化できる手法をもとに、粒子の放射能を測定して CsMP と判別できる「しきい値」を確立しました。実際に福島の表層土壌に適用したところ、全放射能の内 CsMP からの放射能が 8-38%を占めること、CsMP が最大 1020 個/g 存在することが分かりました。QCP 法は一定条件のもと様々な環境の試料に適用できることから、現在、身の回りに CsMP が何個あるのか、CsMP がどう分布しているのかが分かります。また、災害後に採取された試料の分析を時系列で行うことで、自然界での CsMPの移行挙動が分かってくると考えられます。さらには、除染や汚染土壌の処理の際に不安視される CsMP の存在量が分かり、安全性の確認に役立つと期待されます。

 本研究は、文部科学省の科学研究費挑戦的萌芽研究 (16K12585)・公益財団法人三菱財団自然科学研究助成 (29102) の支援を受けて行われたものです。また、本研究成果は、2018 年 5 月 22 日 (火) (日本時間) にアメリカ化学会誌「Environmental Science & Technology」に掲載されました。(https://doi.org/10.1021/acs.est.7b06693)

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