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水野准教授らが生きた細胞内部レオロジーを直接測定する手法を開発しました。

  • 2017年10月4日(水)

 九州大学大学院理学研究院の水野大介准教授の研究グループは、これまで困難であった生きた細胞内部のレオロジー的性質(硬さ、ねばっこさや、発生する力の大きさ)の測定を可能にしました。

 レオロジーは物質が持つ最も基礎的な性質であり、工業製品やハイテク機器の性能・機能や耐久性を評価する際には必ず計測されます。したがって、私たちの体の基本的な構成単位である細胞の性能や機能を評価するためにも、当然計測することが望まれてきた物性量でした。しかしながら、普通の細胞は大きさが高々10μm ほどしかありません。しかもその内部の物質は、分子サイズのモーターにより激しくかき乱され、一定の状態にとどまることもありません。このように微小で活発な細胞内部環境のレオロジー的性質を計測することは極めて難しく、これまでは、細胞の表面を外側から引っ掻いて細胞膜近辺を調べることしかできませんでした。細胞“内部”の性質を計測できないことは、細胞の振る舞いに不明な点が多く残る一つの原因となっています。

 そこで、水野准教授の研究グループは、生きた細胞の中に小さな粒子を撃ち込み、その粒子の外場に対する応答や揺らぎを精密に観測することを試みました。生きた細胞内部では激しい細胞質流動が生じていますが、Feedback 制御を用いて細胞質流動に伴う粒子の動きを時々刻々補正することで、細胞内部の粒子の位置を常にナノメートル以下の精度で検出できる測定システムを開発しました(参考図1)。細胞内部に撃ち込んだ粒子は、主に細胞によって動かされています。従って粒子が大きく揺らぐからといって、細胞が柔らかい、あるいは、さらさらであるとは言えません。(それが言えるのは死んでいる細胞の場合だけです。)そのために、細胞内部の粒子にレーザーで力を与えたときの応答から、細胞のレオロジー的性質を求めました。また、揺らぎとレオロジー的性質を同時に測定すれば、細胞が生み出している力の強さや活きの良さも分かります(参考図2)。  

 今回開発された測定手法によって細胞内部のレオロジー測定が可能になったことで、物性物理学、細胞生物学、医学等の幅広い分野での研究の発展に貢献することが期待されています。

 本研究成果は、2017年9月29日(金)午後 2 時(米国東部夏時間)にオンライン科学誌「Science Advances」に発表されました。(https://doi.org/10.1126/sciadv.1700318)

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