HOME > 広報 > トピックス > 2017年8月18日(金)

劉助教、下東名誉教授らの共同研究チームによるERRγホモダイマー証明の論文がバイオ医学分野のブレークスルー研究として認定、紹介されました。

  • 2017年8月18日(金)

 大学院理学研究院化学部門の劉 暁輝 助教、下東 康幸 名誉教授らの共同研究チームによる学術研究論文「α-Helix-Peptides Composing the Human Nuclear Receptor ERRγ Competitively Provoke Inhibition of Functional Homomeric Dimerization」は、Biopolymers誌の106巻4号(2016年7月)のPeptide Science特集号「Emerging Peptide Science from Japan」に掲載されましたが、この2017年8月になって、プラットホームWeb情報誌 Biomedical Advancesに、編集長選抜(Editors’ Picks)によるバイオ医学分野のブレークスルー研究として認定、紹介されました。

 細胞における遺伝情報の発現は、生命現象の根幹を成す最も重要な過程です。これにスイッチONするのが、甲状腺ホルモンやステロイドホルモン、ビタミンなどであり、また、それらが結合する核内受容体です。ホルモンが核内受容体に結合すると、DNAからmRNAへの転写が活性化され、タンパク質が生合成されます。いくつかの核内受容体について、2分子が対になったホモダイマーとして働くか? 1分子だけのモノマーとして働くか? 長い間、論争になっていました。

 大学院理学研究院化学部門の劉 暁輝 助教、下東 康幸 名誉教授を中心とする共同研究チームは、ヒト核内受容体の一つ、エストロゲン関連受容体γ型・ERRγはホモダイマーとして働くことの証明に世界で初めて成功し、十数年来続いた「ERRγのモノマー・ダイマー論争」に決着をつけました。まず、ERRγに結合するペプチドを設計して、細胞内で生合成させて「ダイマーになるのを阻止する」という新奇な方法を確立し、ERRγがホモダイマーでないと転写活性化しないことを示しました。しかも、ペプチドはそれ自体では細胞質に留まるものの、ERRγに結合・搭載されると、DNA⇒mRNA転写の場である細胞核に運び入れられること、移行することを免疫組織学的に示すことに成功しました。この証明は、細胞機能のうち最も重要な受容体応答であるDNAの転写活性化の分子メカニズムにきわめて重要な分子基盤となるもので、この点で高く評価され、バイオ医学分野のブレークスルー研究として認定されました。

 一方、この研究チームは2006年には、ERRγが内分泌撹乱物質(通称:環境ホルモン)・ビスフェノールAの特異的な受容体であることを証明し、さらに、ERRγが胎児脳や胎盤に多く含まれることなどを明らかとし、国際的に大きく注目されました。今回の研究成果により、ERRγのモノマー・ダイマー論争に終止符を打つとともに、ビスフェノールAの内分泌撹乱作用を解析する分子基盤も確立され、今後、その分子メカニズム解明研究が大きく進むことが期待されます。

※本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

関連先リンク