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石橋准教授のグループが沖縄熱水海底下生命圏掘削により熱水孔下生命圏の限界を発見しました。

  • 2016年10月18日(火)

 九州大学理学研究院の石橋純一郎准教授らの共同研究グループ(国立研究開発法人海洋研究開発機構、東京大学、九州大学、高知大学、ドイツ連邦地球科学天然資源研究所)は、2010年9月に実施した中部沖縄トラフ熱水活動域での科学掘削(沖縄熱水海底下生命圏掘削)で取得した柱状試料(コアサンプル)を用いて、深海熱水噴出孔近傍の海底下に存在する生命圏「熱水噴出孔直下生命圏」の存在様式とその限界を明らかにしました。

 これまでの深海熱水活動域の噴出熱水や熱水チムニー等を対象とした研究により、熱水噴出孔の海底下には地球内部エネルギー(還元的無機化学物質)に依存した超好熱性微生物の住処(熱水噴出孔直下生命圏)があることが強く予見されていました。しかし、科学掘削やその試料による直接的な証明に到った研究例はありませんでした。統合国際深海掘削計画(IODP)第331次研究航海では、この熱水噴出孔直下生命圏の直接的証明とその実態を世界に先駆けて解明することを目的に、中部沖縄トラフ伊平屋北海丘において地球深部探査船「ちきゅう」による掘削調査を行いました。本研究では、その航海で取得されたコアサンプルの詳細な地球化学的分析と微生物学的解析を行い、微生物学、地球化学、鉱物学的手法を組み合わせた学際統合的な手法と解釈を通じて、海底下高温熱水溜まりの変動やその化学組成の変化に伴う生息環境の空間的・時間的変化に規制された「熱水噴出孔直下生命圏」の存在を明らかにすることができました。また、本研究は、海底下環境に生命圏と非生命圏の境界が存在することを世界で初めて明確に捉えることに成功し、その生息限界を決定づける物理・化学条件(今回の場合は高温)を明らかにした点で、地球における生命活動や生命圏の限界という根源的な科学命題に一つの答えを与える画期的な成果と言えます。

 本研究は、国際微生物生態学会が発行する『The ISME Journal』(Nature Publishing Group;2016年10月18日号;https://doi.org/10.1038/ismej.2016.119)に掲載されました。

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