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藤原助教、石原教授らが動物の行動が性的成熟期に変化する仕組みを解明しました。

  • 2016年6月6日(月)

 九州大学大学院理学研究院の藤原学助教、石原健教授らの研究グループは、神経系のモデル生物である線虫を用いて動物の行動が性的成熟期に変化する仕組みを明らかにしました。

 多くの動物は成長段階に応じて行動パターンを変化させることが知られていますが、そのような行動変化の制御機構はほとんど分かっていません。研究グループは今回、こどもの線虫と大人になった線虫では匂いの好みに違いがあることを明らかにしました。線虫は卵からふ化後、大人になるまでの間に生殖細胞が増殖して性的な成熟が起こります。生殖細胞の増殖を人為的に止めて生殖細胞を持たない大人の線虫を作ると、匂いの好みがこどもの時のままであることが分かりました。また生殖細胞を持たない線虫では、匂いを感じるのに働く神経回路中の特定の神経細胞の反応が弱くなっていました。これらのことから、生殖細胞が増殖すると、嗅覚の神経回路の反応が調節され匂いの好みが変わるのではないかと考えられます。また、この制御にはストレス耐性などにも働く転写因子(遺伝子発現を調節するタンパク質) DAF-16 / FOXOが関わっていることも示されました。本研究結果は、動物の行動変化が生殖腺の成熟とリンクして起こる仕組みを、線虫を用いた分子レベル及び神経回路レベルの解析から初めて明らかにしたものです。このような解析から将来、思春期特有の心の変化など人の心でも起きている現象が説明できる可能性があります。

 本研究成果は、2016年6月2日(木)正午(米国東部夏時間)に、国際科学誌「Current Biology」のオンライン版(http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2016.04.058)に掲載されました。

※本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下の九州大学プレスリリースをご覧ください。

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