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学生の皆さんへのメッセージ

グローバル ブリッジ オフィスメンバー 

稲垣 紫緒 准教授 (物理学部門) 

 こんにちは。理学研究院物理学部門の稲垣です。今回は、語学力のおかげで転がり込んできた運 (?) のお話をしたいと思います。

 私が博士の 1 年の時に、日本で行われたある国際会議に参加しました。この会議は、1 週間参加者が郊外のホテルに缶詰めになって行われるもので、朝、昼、晩、とご飯も参加者の人たちといつも一緒でした。あるとき、お昼ごはんで隣の席に座った先生に、「どんな研究をされているんですか?」と話しかけて、「私、今そこにポスター貼ってあるんだけど」と言って、私も自分の研究を紹介しました。そのあと、その先生の共同研究者の人も交えて、その日は夜中の 3 時まで議論して盛り上がってしまいました。その会議中に、「よかったらうちに研究しに来たら?」と誘っていただいて、訪問研究生として授業料と滞在費を出していただいて、アメリカのコーネル大学に 1 年留学することになりました。今思えば、何の業績もないどこの馬の骨とも分からない学生をよく拾ってくれたな、と思います。当時はコーネル大学がアメリカでも有数のいい大学だということも知らなかったくらいですが、こんな幸運がめぐってくるときもあります。

 国際会議では、会議中にオーガナイザーがその町の観光案内 (official excursion) をしてくれることがあります。博士 2 年の時にドイツであった研究会では、excursion のとき隣を歩いていた人に、「あなたのさっきの発表、面白かったね!!」と話しかけて、ちょうど私の数値計算と少し関係があったので、研究のアドバイスをもらったりしました。そのあと時々メールでやり取りしていたのですが、ちょうど私が博士の学位を取る直前にもメールでやり取りをしていて、「学位取ったらどうするの?」と聞かれたので、まだ決まってない、と言ったら、「じゃあうちでポスドクしたら」と言っていただいて、オーストラリアで 1 年間ポスドクをすることになりました。

 フランスは、私の研究分野である粉粒体の実験を活発に行うグループがたくさんあり、いつかフランスで研究したいと思って、修士の頃から独学でずっとフランス語を勉強していました。上記のドイツの研究会の時に、フランス人の先生と知り合いになったのですが、その先生に「大使館のHPに留学用奨学金とか載ってるから見てみたら」と言われて、「そんな奨学金あるのか」と思いつつ半信半疑で調べてみたらフランス政府給費奨学生というのがありました。最近は留学情報で事務からフランス政府給費奨学生の情報も時々流れていますが、私が学生だった当時は全く知りませんでした。ネットで合格者の体験談を見たら、面接をフランス語でやった、という人が何人かいて、「確かにフランス語で話したほうが熱意が伝わるかも」と思って、A4 用紙 5 ページほどフランス語の原稿を作って、丸暗記して面接に臨みました。これが無事採択されて、オーストラリアでポスドクをした後、ずっと行きたかった研究室でフランス政府給費奨学生として 1 年間研究をすることができました。

 これらの話は本当にラッキーだったと今でも思っています。正直、私の人生本当に運頼みだな。。と思っています。でも、もし私が日本から出ずに、国際会議などでも日本人同士でかたまっていたら決して得られなかったチャンスです。チャンスってめったに巡ってこないもの、という感じがしますが、実は思ったよりたくさん転がっていて、そのチャンスに気づくかどうかは自分次第なんじゃないかな、と今は思っています。フランス語を独学していた当時は、いつかフランスに行きたい、と思っていただけで、運を増やしたいと思って勉強していたわけではないですが。。。英語ができればチャンスは 2 倍、フランス語も話せれば 3 倍。。。話せる言語が増えればその分遭遇するチャンスも単純に増えます。語学力を磨いて、人と積極的に交流することで、それだけ広く感度の強いアンテナが張れる気がします。

 国際会議では、研究分野の近い人がたくさん集まって、普段は話せないような人たちとたくさん議論することができます。しかし、残念ながら日本人は日本人同士でかたまって行動して、なかなか外国人研究者の人たちの輪の中に飛び込むことができない人が多いです。例えば、研究室に外国からビジターが来て、みんなで食事に行こうか、と誘ってもついてきてくれる学生さんはほとんどいません。フランスから戻ってきて、京都でポスドクをしているときに、英語力に自信が持てずに日本人同士で固まっている学生さんたちを見てもったいないな、と思っていたのがきっかけで、九大に着任後、理学研究院に支援していただいてサイエンス英会話筋トレという活動を始めました。2016 年に始めてもう 7 年目になりますが、毎年受講してくれる学生さんもたくさんいます。学生さんたちがいざというときに、自信をもって外国人の輪の中に入っていくための準備が少しでもできたらいいな、と思っています。

 ビジネスでも、語学力によって人生が変わるようなチャンスに遭遇することはあると思います。英語が話せるようになりたい理由は、いろいろあると思いますが、研究者を目指す人に限らず、これを読んで「英語を上達したい!!」と思う人が一人でもいてくれたらいいなと思います。Good luck!!!

フランス留学中に研究会で訪れた Carry-Le-Rouet の海岸にて
フランス留学中に研究会で訪れた Carry-Le-Rouet の海岸にて