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地球深部物理学研究室

スタッフ

  • 金嶋 聰 教授
  • 高橋 太 准教授

地震波動や地磁気の解析による地球深部構造と変動の研究

 地球の内部は45億年の間ダイナミックに運動し変遷してきました。また地球と月は誕生以来お互いに相互作用をしながら進化しました。そのような地球内部と地球・月システムの状態と変遷を理解するために、本研究分野では以下の様な研究を行っています。

地球の深部はどうなっているのか

 アリストテレス自然学においては、地球は不動の世界中心に位置する不毛な土の塊であって、人間の好奇心の対象ではありませんでした。宇宙あるいは星辰の世界に対して人間が深い関心を抱いた事と対照的だった訳です。17世紀に近代的な自然哲学が成立すると、人間にとって地球は、自らの知的活動を通じてその正体を理解すべき驚異に満ちた自然へと変貌しました。そして、19世紀の地質学成立により、地球表層付近に関する人間の理解は著しく進展しましたが、地球の深部は相変わらず神秘のベールに包まれていたのです。地球深部の解明に画期的な進歩をもたらしたのは、20世紀開始と共に始まった地震学をはじめとする地球物理的研究です。地球は地殻、マントル、外核、内核から成り立つ事は良く知られています(図1)。

 21世紀の現在、我々は地球深部について、驚くほど詳しく知っています。地表に張り巡らされた地震観測点網により、我々は医者が聴診器によって体内の音を聞くように、地中の音(地震波)に耳をすませます(図2)。そして過去2億年に地表から地球深部に沈み込む海洋プレートはいうに及ばず、最近では、数十億年前に海底を覆っていた地殻と考えられる地球深部の岩隗さえも見つける事ができるようになっています。また、地球の岩石に含まれる諸鉱物は圧力と温度の増加に伴い結晶構造を変化させると推測されていますが、この構造変化が具体的にどの様に起きているのかも徐々に明らかになってきました。人間が直接見ることのできない地球の深部は未だに不明な点が沢山残っていることは言うまでもありませんが、地球深部の年代史を明らかにすることのできる日が近い将来やって来るかもしれません。私達はこのような事を研究しています。

地磁気・月磁気異常の成因に関する研究

図3 数値シミュレーションによる外核中の流れの構造。青色は時計回りの渦、赤色は反時計回りの渦を表す。矢印は自転角速度ベクトル。
図3 数値シミュレーションによる外核中の流れの構造。青色は時計回りの渦、赤色は反時計回りの渦を表す。矢印は自転角速度ベクトル。

 地磁気を観測することによっても地球内部の様子を知ることが出来ます。地磁気は地球中心部の外核で作られています。外核は主に鉄で構成されていますが、高温のために液体として存在しています。液体金属である外核は活発に運動しており、電磁誘導による発電作用(ダイナモ)を引き起こします(図3)。このダイナモが地磁気を生成・維持するメカニズムです。地磁気は過去30億年以上前から存在しており、その間に極性を何度も反転させるなど非常 にダイナミックに変動しています。上述の通り地磁気の変動は核の運動のダイナミクスの結果であり、核の運動から地磁気の変動を計算することができます。我々はコンピューターシミュレーションによって核と地磁気のダイナミックな現象を精密に表現できるダイナモを実現することを目指して研究を進めています。

図4 かぐや衛星搭載の月磁力計による月の磁気異常図。(上)表側;(下)裏側。
図4 かぐや衛星搭載の月磁力計による月の磁気異常図。(上)表側;(下)裏側。

 また、現在月には地球のような固有の磁場は有りませんが、局所的に磁場の強い地域(磁気異常)が存在しています(図4)。月の磁気異常はどのようにして形成されたのでしょうか。その成因は月の起源や進化を理解する上で重要な情報を含んでいると考えられています。その一つに過去の月にも地球と同じように、核のダイナモによるグローバルな磁場が存在していたのか否かという月の科学上の大問題があります。この問題に答えることは月形成のモデルや材料物質の量、月の熱進化に関する制約条件となります。私達は我が国の月周回衛星かぐやに搭載された月磁力計(LMAG)によって取得された月磁場のデータを詳細に解析することによって、月の起源・進化の解明に迫るべく研究に取り組んでいます。